ファンコミュニティ作りがとても上手な『 邪神ちゃんドロップキック 』。
様々な企画にファンを巻き込み、ファンと一緒に物語を創り上げています。そんな『 邪神ちゃん 』がファンに愛され続ける秘訣を、宣伝プロデューサーである栁瀬さんにお伺いました。
――「邪教倶楽部」は、『邪神ちゃんドロップキック』(以下『邪神ちゃん』)のファンコミュニティです。Faniconでは、アーティストやアイドルのコミュニティが多い中、アニメIPは珍しいケースといえます。『邪神ちゃん』が、Faniconを選んだ理由を聞かせてください。
まず、『邪神ちゃん』の作品コンセプトの説明をさせてください。私たちは、この作品を「一生続けるアニメ」として立ち上げ、今もその目標に向かって走り続けています。
そういうコンセプトを作った背景として、現在の日本のアニメ、とくに深夜アニメは毎クール50から70本の新作が放送されています。ほとんどの作品が、放送終了後は忘れられてしまう状況なんです。
――アニメファンの間でも、「嫁(アニメの好きなキャラクター)は1クールで変わる」という言い方もされていますよね。
そんな風に消費されてしまうのが個人的には悲しくて。『邪神ちゃん』のスタッフはそうならないように、「ずっと続けていたい」と作品作りに関わっています。
『邪神ちゃん』が、目指しているのはキャラクターだけでも認知してもらえる有名キャラクターのような存在です。あの有名な赤いリボンの猫ちゃんとか、作っている人は何度も世代交代しているのに、キャラクターは生き続けているじゃないですか。
僕らがやりたいのは「アニメビジネス」ではなく「IPビジネス」なんですね。
――実際に『邪神ちゃん』は、アニメの1期が終了したあともクラウドファンディングを成功させたり、千歳市のふるさと納税で1.8億円集めたりと、新しい形のファンコミュニケーションを積極的に行っている印象があります。
ふるさと納税のときは、NHKさんや東スポさんも取り上げて下さいましたし、地元紙「千歳民報」は、大体的にイベントの記事を載せてくれたんです! ……この愛され方たるや!
これだけ愛してもらっている理由ですが、邪神ちゃんでは「物語」を大事にしているというのが大きいと思います。
近年、「モノ消費からコト消費へ」とはよく言われていますが、私はコンテンツビジネスはもはや「コト」消費から「物語」消費に更に移り変わっていると考えています。
――と、いいますと?
色んなところに閉塞感が漂う今の世界って、夢を掲げにくい世の中じゃないですか。 「これを実現したい!」と宣言するのは、ものすごく勇気が必要です。
そんな中、『邪神ちゃん』は自分たちのやりたいことを明確に発信しているんです。「DVDが2000枚売れたら2期やります」だったり、「1500万円集まったら、故郷に鈴木愛奈さんを連れていきます」とだとか。
そうすることで、ファンの皆さまが『邪神ちゃん』の夢に共感してくれて、実現できるかどうかわからないそのチャレンジそのものを楽しんでくれているように思えるんです。これは作り手が作ったものをただ消費するというスタイルとは異なる、コンテンツビジネスの新しい形だと思っています。
――そして、アニメ『邪神ちゃん』は2018年夏季に1クール放送され、今年の春に晴れて2期がスタートしますね。
「ずっとやっていく」IPにとっては、数十年という時間に対してたった3ヶ月のアニメ放送期間が占める期間はごくわずかです。
そして『邪神ちゃん』は1期から2期の間に1年半以上の間が空いています。その間を埋めるものを、考えなくてはいけなかったんですよね。
Twitterでも情報を発信していますが、「公式」から「ファン」へ、一方通行のみのコミュニケーションになりがちでした。
――たしかに。
私達が実現したかったのは、公式から情報を発信するだけでなく、ファン同士も交流する形なんです。1期の時にはこのように、ツイッターでファンの皆さまに一方的に情報を発信するだけでした。【ホワイトボードに図を書きながら】
「ずっと続けていく」がコンセプトの『邪神ちゃん』にとっては(図を描いて)、邪神ちゃんを話題にする機会を増やすため、私が一方的にしゃべるのではなくファンの方たちが横で繋がるこの形が望ましい。そのためにはコミュニティ型のファンクラブを作るのが良いと 思いました。では理想の形は見えたが、どう実現するのか。自前でシステムを作るか、外注するかの2択でした。
当初は、Apple・Googleのプラットフォームに3割とられる上に、システム利用料金がかかるくらいなら、システムを自前で作ろうと考えていました。ですが、Faniconの機能や思想のプレゼンを受けて、実際すこし触らせてもらった結果、「これは自前では作れないな」と観念して、Faniconさんとご一緒することを決めました(笑)。
――Faniconをどういう風に利用されてますか?
「邪教倶楽部」は主に私が投稿を担当しています。
私はプロデューサーとして、上映やイベントに向けて、ずっと仕事をしてます。そこで出てきた情報を、いち早くFaniconでファンの皆へ伝えたりしています。
そして、『邪神ちゃん』を盛り上げるために、ファンの皆さんの意見を直接聞くなど、ある意味「仕事の相棒」のようなやりとりをしているので、「一緒に作品を作っている」感覚は大きいと思います。
――まさに「物語に参加している」と。Fanicon内でのユーザー会議で生まれたグッズ企画もあるそうで。
ありますね。さまざまなパターンを作って、皆に「どれがいい?」と尋ねて作りました。他にも、Fanicon発で生まれた事例は、枚挙にいとまがありません。
――やはり盛り上がるんですね。
はい、「盛り上がるかどうか」も、もちろん大事です。
しかし、もっと大事なのは、会議に参加した人は、その商品が「自分ごと」化されているので、それが発売されたときに、「誰かの作ったもの」ではなく、「自分が作ったもの」になっているんです。
ただのグッズではなく、ご本人にとって大切なものになっている。それが、一緒に作ることの1番の良さではないでしょうか。これは『邪神ちゃん』に限らず、他のIPでも実現できると思います。
――Faniconは他のアニメIPにもおすすめできますか?
もちろんおすすめです!
特に「ずっと続けていく」IPには向いていると思います。例えば、スタッフや声優が代替わりしてもやるような、子供向けの長期シリーズには向いているのではないでしょうか。
あるいは、アニメ制作スタジオ単位のFaniconも、毎クールごとに作られる新作の営みを見せることができます。
――それはファンにとっても嬉しいでしょうね。
アニメファンの皆さまは、作り手のことを熱心に理解しようとしているので、新しい絵コンテを1日1枚出していったりして盛り上げたら、上手くいくのではないでしょうか。
他にもアニメの原作マンガを沢山抱えているコンテンツマザーたる出版社も、毎クール作品を作り続けていくことが運命付けられているわけで、担当者を設定して日々のモノづくりの過程をコンテンツとして提供していく仕組みは成立すると思います。
――『邪神ちゃん』は、Faniconでさまざまな企画を立ち上げていますが、Faniconスタッフとはどのように連携しているのでしょうか。
担当さんに思いつきで「こんなことやりたいんですけど」ってメールを送ったら、「良いじゃないですか、やりましょう!」と即レスで返ってきます(笑)。
そういった企画が、これまで実現されなかったことはありませんね。Faniconは、スマホ一台あれば実現できることが多いため、気軽に試行錯誤を繰り返すことができます。
以前使っていたサービスでは、それなりにしっかりした機材とスタジオがないと、出来ることが制限されてしまうことが多かったので、Faniconは試行錯誤型コンテンツである『邪神ちゃん』にピッタリなんです。
――『邪神ちゃん』はファンと良い関係が作れているように思います。そういったコミュニケーション構築するにはどうしたらいいのでしょう?
私の夢は、『邪神ちゃん』ファンの皆と一緒にずっと年をとっていくことなんです(笑)。そのくらい『邪神ちゃん』には続いていってほしい。いつか代替わりした新邪神ちゃんをみんなで観られるくらいに!
だけど、いくら仲良くすると言っても、一部の方に肩入れし過ぎてしまうと、「タコツボ化」してしまうじゃないですか。
――特定の古参ファンだけが盛り上がって、新規が入りにくい雰囲気のコンテンツは先細りしてしまいがちですね。
それを回避するためには、つねに間口を広くすることは意識しています。
古参ファンの方にも、「『邪神ちゃん』と我々が、ずっとやっていくためには新規は不可欠! タコツボ化はよくない!」と言ってるので、皆さんも「新規大事!」と”布教”を頑張ってくださっています。
Faniconにも新しい人が入ってくると、グループチャットでは「よく来た!」と、新規ファンを皆でもてなしています(笑)。
――ちなみに、Fanicon内で目立ったトラブルは?
目立ったものはひとつもありませんね。皆、ここを自分の居場所だと思っているので、わざわざ自分の居場所を自分で汚す人はいないのではないかなと思います。
――最後の質問です。今後はFaniconでどんなことをやっていきたいですか?
ファンの皆の「遊び場」にしたいと考えています。直近でやりたいのは、Faniconで「人狼ゲーム」を実現したいです!
――「人狼」というと、人間(村人)と狼に分かれて、相手の正体を探っていくゲームですね。それを『邪神ちゃん』で?
現在、『邪神ちゃん人狼』というカードゲームを作っていて、これはアニメの9話で、神保町がゾンビで埋もれちゃうエピソードを元にしたゲームなんです。
邪神ちゃんは、ゆりねが死んだら魔界に帰れるので可愛い顔してソンビ陣営となり、他のキャラクターにさとられないように、いかにメンバーを殺していくかというカードゲームが3月に出ます!
――そのゲームをFaniconのグループチャット機能を使って行うと。
そうなんです。まずはファン同士で盛り上がってもらって、勝ち抜いた人がキャストさんを交えたゲームに参加できるとか、キャストさん同士での対戦を生配信とか、「これはFaniconと相性がいいぞ!」と。
ゲームのパッケージにも「Faniconで遊ぼう!」って入れたいくらい(笑)。まずは私がゲームマスターとしていく形になると思うんですが、人狼に限らず、ゆくゆくは起点が私ではなく、皆さまが勝手に自由に遊んでくれる、自走型コミュニティを目指したいですね。
――それは、私たちFaniconも理想としている形です。Fanicon内で実現できているコミュニティはまだ存在しないのですが。実現した際は、またインタビューをお願いしたいです。
ゆくゆくは人狼をFaniconのコミュニティまたぎで対戦しましょう(笑)。人狼以外のパターンでも汎用で盛り込めるものがあれば、ぜひ他のコミュニティでも『邪神ちゃん』発、Faniconの機能として実装できたらいいですね。