1998年の結成以降、日本のロック界に大きな影響を与えながら今も精力的な活動を続けるthe band apart。今回はthe band apartのフロントマンであり、ソロ活動も行われている荒井岳史さんにご自身が運営されるファンコミュニティについてお話をお伺いしました。
――まずはFaniconを知ったきっかけを教えて下さい。
最初にFaniconのことを知ったのは、とある無観客配信ライブで、友人のミュージシャンのフルカワユタカさんと共演したときです。彼との会話の中でFaniconの話が出たんです。そこで詳しく話を伺って興味を持ちました。
――それはいつごろですか?
昨年の3月末ですね。新型コロナウイルスの影響で有観客ライブが中止になったりしていた頃で、あの時期はどんなお仕事の方もそうだったと思いますが、僕たちの業界もこれからどうなるのか、どうするのかが見えない状況でした。だからこそ色々考えていたところだったので、話を聞いて「絶対やろう」と思って、5月にスタートさせました。1ヶ月くらい開いたのは制作で忙しかったからで、その中でも最短でやろうと思って進めました。
――コロナ禍になったことがFaniconをはじめたきっかけになったということでしょうか?
コロナ禍がなくても、もしかしたら、なんらかの理由でやっていたかもしれないけど。コロナになって自分たちのできることを制限されたことが、大きく背中を押したところはあります。とにかくどういう形であれ、歌ったりとか、人になにかを伝えたりする場が持てるというところに魅力を感じました。
――ほかのファンコミュニティサービスを調べたり、検討したりはされましたか?
してないです。メンバーの木暮がnoteをやったりとかしてるくらいで、そんなにファンコミュニティサイトを知らないんですよ。バンドとしても個人としても、そういうこととは無縁でやってきたんですよね。The band apartはそんなにとっつきにくバンドではないとは思ってますが、マイペースなので(笑)。ファンの方もそのマイペースを楽しんでくれているというか。
――The band apartではなく荒井さん個人でのFaniconなのも、バンドのカラーを考えてのことなのでしょうか。
バンドもソロもどっちも楽しさがあって、Faniconのファンの方とより深くコミュニケーションするというフォーマットが自分のソロで目指していることにフィットした感じです。
――実際に利用してみて、いかがでしたか?
単純に数ヶ月の間、人を意識して歌うことができなかったので、配信を通してできるようになったことは良かったです。
それに加えて、夏くらいに配信ライブイベントに出たことがあって、僕らのリハを観ていた友人のミュージシャンから「なんだかブランクを感じないね」と言われたんですね。
当時周囲のミュージシャンの間で「(ライブの期間が)開いてたから声がでない」ということが話題になっていたんです。
5月からFaniconの配信で毎週歌い続けていたことで、無意識にコンディションがキープ出来ていたところがあったのかもしれない。
――Faniconがそういった部分でもお役にたてたのは嬉しいです。
もうひとつ気づいたことがあって。新型コロナウイルスの影響でライブができないことがきっかけで配信を始めたわけですけど、やっているうちにコロナ禍じゃなくても、仕事や家庭の事情でライブに来れない、でも音楽やトークを聴きたいという方々がいたことを、今更ながら知ったというか。
――学生や若い頃は比較的時間の自由がききますが、年齢を重ねるとまた立場が変わってきて、気軽にライブに足を運ぶことが難しくなる人も多いように感じます。
そうなんです。僕らも20年以上音楽をやっているので、お仕事が忙しいとかご家庭があるとかで、「何年もライブに行くことができなかったけど、配信があってよかった」という方の声を聞いて、コロナ禍とは関係なくこういったニーズもあったことに気づけたのが、1番大きな収穫かもしれないですね。
これまではどうしても、ライブ会場にいる眼の前の人たちを見ていたことが多くて、自分たちの方からファンの人の情報を取りに行く術を知らなかったので、それを教えてもらった感じです。
――ラジオのようなトークだったり演奏中の手元を映す動画だったりと、ユニークな配信もされてますよね。
それも、生配信をやりながら対話していく中で、ファンの方から「どうやって弾いているのか」という声を聞いて始めたことなんですよね。「御用聞き」じゃないですけど、Faniconのコミュニティの中で、皆がどんなことを求めているのかを聞きに行っている感覚はあります。
――Faniconと、Twitterなど他のSNSの使い分けはされていますか?
僕らのようなバンドの場合、SNSの場合「今日はライブをやりました、ありがとうございました」みたいな、こちらからの一方通行の出し方になるんですよね。ドライな言い方をすると宣伝ツールというか。Faniconの場合は、そこからもう一歩先に踏み込んで、こっちから色々聞いてみたり、普段話さないようなプライベートな話をしたりと、結構しっかりとした線引きをしていますね。
――線引きできている理由としては、Fanicon内はファンしかいないとわかっているのも大きいのでしょうか?
そうですね。「知ってる人」に向けている感覚になるというか。それに、こうやって配信を通してのコミュニケーションを続けていることで、コロナ禍でライブができない状況でも、張り合いがでたというか、元気づけられた、助けられた部分も大きので、そこに対しての恩返しもあります。
――Faniconの思想としては、「With fan, More fun. 」という言葉を掲げています。ファンの人ともっと「一緒に」楽しむことがコンセプトなんですよね。バンドのコンセプトやミュージシャンによっては、そういう部分を出すことが難しい人もいると思います。そういう意味では、Faniconに向いているミュージシャンはどんな方だと思いますか?
半年やってみた経験からいえば、やっぱり、音楽やファンの方との関係性について、普段から考えているミュージシャンにはオススメできると思います。あとは、パブリック・イメージだとクールだけど、楽屋でしゃべるとおもしろい、みたいに意外性のある人もいいんじゃないでしょうか。
――なるほど。
実務的なことをいうと、ある程度マメじゃないと続かないとは思います。僕は最低週に1回は生配信をやっているんですけど、できない週は手元動画やラジオをアップしています。そういったある種のルーティン作業自体を楽しんでやれるかどうか、みたいなところはありますね。だから飽きっぽい人はおすすめできないかもしれない。
――更新のモチベーションを保つコツはありますか?
モチベーションというか、僕の場合は歌うのはもちろんのこと、しゃべったりするのが結構好きなんだなと続けてみて思いました。他のアーティストさんがどのくらいやってるかはわかりませんが、毎週2時間くらいやってるんですよ、1時間じゃ終われない。配信時間のデフレを自分自身で起こしちゃってる(笑)。
――デフレ(笑)。
最初はめちゃくちゃ緊張していたんですけど、最近は慣れて来たこともあって、気軽にやれる感覚もあります。途中からお酒を飲みながら歌ったり話したりするようにもなって。
最近では「配信中に泥酔してください!」みたいに言われることもありました。さすがにそれは出来ませんけど(笑)。そういうことが言いあえる関係になっています。
――そういった関係を構築できるというのは素敵ですね。
とはいえ、ファンの方の「好き」に甘えてはいけませんし、マンネリ化しないような努力だったりは必要で。
でもそれもそこまで難しいことでもなくて、例えば日々の出来事を軽く覚えるようにしておくとか。最近は生活の、家事の失敗なんかも「これは配信で話せるな」と前向きにとらえるようになってます。
そういう話ってファンの方からも受けるんですよ(笑)。
配信そのものがモチベーションになっているかもしれません。だから、あまり仕事仕事しないように楽しむことが続けるコツですかね。
――今後Faniconを通じて、こんなことをやってみたいというご希望はありますか?
そうですね、Faniconを使っている友人のミュージシャンたちとも話していたんですが、他の方々のコミュニティを見ることができたり、軽く参加できたりすれば面白いと思っています。お互いのファンに自分のバンドのことを知ってもらうきっかけになるし、そうやってコミュニケーションすることで、全体の底上げに繋がるんじゃないでしょうか。
――ひとつのバンドだけではなく、複数のバンド、ひいてはシーン全体が好きという人も多いですもんね。
そうなんです。だからこそ、もう少し気軽にコラボしやすい環境、機能が出てくると面白そう。それに、僕らは他のひとのコミュニティを見れないので、単純に他の人たちがどんなことをしているのか、めちゃくちゃ興味があります。
――たしかに。
たとえば、今は一つのアーティストに対してのプランしかありませんが、複数同時に入れるプランがあってもよさそうですよね。
――有料BSチャンネルのパックみたいに(笑)。
そうそう(笑)。実際に複数のアーティストの会員になっている人も多いようで。そこをうまくまとめることができたら、もっと広がっていくかもしれない。僕にできることは微力ですけど、皆でやったほうが盛り上がるし、そうなることで、何かいい方向に変わっていくかもしれないと思っています。
ーーありがとうございます!今後もアーティストの皆さんを盛り上げられるようにバックアップしてまいります!